芸術家と呼ばれる人々はどの様な場所で、どんな画材等を使用し、どういう風に作品を製作し、何を考えておられるのか、なかなか窺い知ることの出来ない芸術家たちの舞台裏を、制作の場であるアトリエに訪問して 覗かせていただこうと思います。
第一回目は広島市立大学教授の三原捷宏氏(日洋会常任委員・当美術館理事長)です。 アトリエはご自宅の隣にあるのですが大学が夏休みということで、研究室を訪問させていただきました。
天井が高く、また数十畳(?)ほどの広さのアトリエに圧倒されながら、まずは三原氏の使用されている画材について訊いてみました。
――― 先生、これがパレットですか?
三原 「そう、大理石」
――― 大理石!?大理石というのは絵を描く上で何か意味があるのでしょうか?
三原 「使いやすい」
―――なるほど、広々していますね。
三原氏愛用のパレットはなんと大理石! B2用紙くらいであろう、一枚の大理石をしようしておられます。
アトリエにある作品を見せていただきました。
三原 「キャンバスは極細」
―――極細。極細とか極太といったものがあるのですか?
三原 「ええ、あります」
キャンバスとは麻の布を膠で目止めし、ホワイトで地塗りをされたもので、この上に絵の具を載せていきます。テクスチャーは細目、中目、荒目とあり中目が一般的ですが、三原氏は極細(フランス製クレサン・元ベンジー)を使用されているそうです。
―――極細には何かメリットがあるのでしょうか?
三原 「それはもう描き方が違ってきますからね。人によって」
絵筆もずらりと並んでいます。
三原 「いろいろあります。これはオックス(雄牛の耳の毛。やや軟質)、豚毛もありますね」
――― 豚毛が硬いのですか?
三原 「そうですね。このテンゲなんかは軟らかいです」
―――この絵筆も何枚か絵を描いたらだめになってしまうのですか?
三原 「何枚ということはありませんよ、あっという間です。全部これで描きますから」
―――そうですか。これで細部を描き上げていかれるわけですね。
<原 敏昭>
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