アトリエ訪問第16回 北田 和広氏

日本人が大切に残してきた古典の「こころ」を求めて、
今も厳島の四季折々の祭事を追っています。

プロフィール
1937年 大阪市に生まれる
86,00年 日展特選
84,85,86,87年 安井賞展入選
88年 ヒロシマアートグラント受賞
03年 広島文化賞
06年 広島県教育賞受賞
光風会文部科学大臣賞
日展審査員
現在 光風会評議員

  どういうわけかアトリエ訪問の当日は快晴ばかり。この日もスタッフ3名が、正月間近なのに暖かい陽光を浴びて、花や樹木に飾られた北田邸にお邪魔した。

  北田先生の作品に出会って、全国各地の美術愛好家が宮島の舞楽にも関心を抱かれるようになったそうだが、私自身も俄かに興味を持ったところであり、お会いできるこの日を早くから楽しみにしていた。ご多忙のなか長時間お話をお伺いしたにもかかわらず、宮島の舞楽を題材にされる前に、県北の民具や神楽などに取り組まれ、次々とブームの引き起こしたお話、一昨年に大病を患われ健康と若さを取り戻された話、恩師の武蔵野美術大学山口長男(たけお)先生のこと、採用から定年までRCC美術スタッフ時代、他人が真似のできない仕事ぶりのことなど気さくにお話いただき、そのお心遣いが有りがたいものだった。

  お話の後アトリエを見せていただいたが、そこには舞楽の大作が4点、わざわざこの日のためにご夫妻が運び込まれたそうでご迷惑をおかけしたが、広い空間を圧倒していた。

  アトリエの広さと高さは以前私が目にした数々のプロの写真家の仕事場をはるかにしのぐもので、横壁には大作を創るために梯子を必要としない独創的な装置が施されていた。

  アトリエの窓は日中の光量が変わらない北向きが条件である事を教えられたが、その北向きのアトリエと居住を組合わせた独特の設計はご自身でなされたそうで、洒落てゆったりした佇まいを感じさせる廊下や応接室には絵画や彫刻、生花や一輪挿しが在り、それぞれの空間を和ませていた。宮島の舞楽とは別にヨーロッパ浪漫紀行の絵画文集をご紹介いただいたが、すでに3冊発行されていて、その作品の一部はこの美術館の作家コーナーで見られるが、ヨーロッパ各地の美術や建築物に対する先生の見識の深さを物語るシリーズになっている。07年3月末には、厳島神社世界遺産登録10周年を記念して、廿日市市主催により先生の作品展が開かれるそうで、そこでまた新しい作品に出会えることを楽しみにしている。

<文・馬場宏二/写真・原敏昭>

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取材中の風景