プロフィール
’88
第一回不二現代書展準大賞受賞
’89
第38回書道学会展文部大臣賞受賞
’91
第4回不二現代書展審査会員推挙賞
第41回書道学会展無鑑査特別賞
’98
第48回書道学会展審査会員推挙
’05
第55回書道学会展 尾上紫舟賞 受賞
現在
(財)日本書道教育学会総務
文部科学省社会通信教育広島県講師
文部科学省認定ペン書道検定広島県幹事・審査員
不二現代書展審査会員
(社)養和書道院副理事長
広島県書道教育協会書道展副審査委員長
中国地区書き初め大会審査員
読売新聞紙上広島展審査員
広島天満書道祭副審査委員長
文部科学省検定教科書(高校書道)編集・執筆
書道グループ「凡」主宰
氏のアトリエからは、もみじが1階より吹き抜けて、鮮やかな緑色が一枚の絵のように見える。
■ギャラリーを通り、稽古の場へ
玄関からお邪魔して、アトリエに伺うまでの空間は、作品や美術品が並べられたギャラリーになっている。
飾られているのは氏の作品ばかりでなく、何度も訪れられている中国の美術品や、可憐な花の飾りなども配置されていて、とても様子がいい。書道グループ「凡」お教室のひとつでもある、氏のアトリエに入るまでの過程で、日常を離れ創作の場に入っていくのだと徐々に実感する。
「ここはアトリエというより道場でしょうね。」印象的な笑顔で舟橋先生はおっしゃった。
部屋に通していただくと大判の拓本が壁面に飾られた部屋は、奥に床があり井上桂園先生の書が掛けられている。氏のお言葉通り道場のような雰囲気がある。氏の元へ学びに来られる方が、気を感じながら並んでお稽古に励む姿が思い起こされる。
「気脈が途切れてしまうから、書に望むときは床で書きます。」と氏が書かれるときの様子をお聞きした。
よく展覧会などで目にする作品のサイズが「サブロク」といわれる90.9×181.8cm。これを床に広げて書するとなると、氏のアトリエのスペースは十分すぎる程あるけれど、かなり体力を必要としそうだ。書の道を実践する場。なるほど道場である。
■アトリエにて
テラスに面したアトリエの一角へ案内された。もみじの緑が美しく、さわやかだった。座った位置の対面に並んだ窓から光が差し込んで明るい。窓辺に沿って硯や墨が並んでいて、美術品が展示されているように見えた。その一つひとつが大事にされているのが感じられる。その奥、仕切りの向こうには水場が備え付けられており、書をしていく上で必要な準備が速やかに出来そうだ。道場の赴きをもちながら実に機能的な場である。ふと、目線をあげると、染色の作品や絵の作品が目に入った。氏の作品だそうで、麻の布に可憐な草花模様があしらわれて、とても素敵だった。何でも自分でしたがるこどもだったそうで、今でも興味が尽きることなく、美術館や展覧会に足を運んだりされると伺った。
■書道グループ「凡」
「なみ」と読む氏の主催する書の会では、二年に一度展覧会を催している。(当ホームページの船橋氏の個人ページからも、過去の展覧会の様子が見られます。
参考:第11回 書道グループ「凡」書作展http://hiroshima-art.net/report/25197.html
展覧会の様子を見ると、お稽古の成果だけでなく、日々様々なチャレンジをされていることに驚かされる。書に添えられた素敵な俳画も目を引く。
素敵なすずりなどのお道具を見せていただきながら、部屋内部に置かれている作品や、関連書籍を拝見した。その中に、書道グループ「凡」の活動の中で作られた刻学作品を紹介していただいた。書道グループ「凡」では、通常の書の稽古に加え、時には氏以外の外部講師を招いて、種々の取り組みをされるそうだ。氏を中心とし、和気藹々と書道を楽しまれている様子が伺える。
氏自身も、陶芸や染色など、様々な分野のお稽古に行かれるそうだ。教わるものにとって、新しい分野や視点を示してくれる氏は、本当に魅力的な先生だろう。
■教えることへの心配りと、これから
「一流のものを見るのが大事。そこから学び取ることはとても大きい」とお話になる。
アトリエに飾られた大きな石からの拓本も、氏が中国で求めたものだ。書道のお手本のはじめは、中国の石碑や文献の拓本である。今日では印刷されたものが簡単に手に入るが、本物・そして一流の物に触れて感じることへの配慮が感じられる。アトリエ書棚の本も、書道グループ「凡」の仲間は自由に借りて行くそうだ。自分で学びとることを教えてくれる機会があふれているように思われる。
氏自身、展覧会や作品展によく足を運ばれ、感動をもらうそうだ。
「本物を見てしあわせ」
「書の仕事でしあわせ」
本当に楽しそうにそうおっしゃった。
この年になってやっと見えてくる景色があると語られる。まず先に『書きなさい、努力しなさい』ばかりだと「嫌」と思うばかりになるが、自分の書いたものを見て、もうちょっとこうしよう、と考え、行うことを積み重ねていく。それでもまだ足りないという事実に行き当たる。
何をしたらいいかわからず、ぼんやり迷ったことがない、進むだけ、その分見えてくる景色のなかで、こうしたい、ああしたいという思いがつぎつぎ浮かんでくるのだそうだ。
今はフルマラソンのスタートラインにたった心地だと、気持ちよくお応えになった。
氏の走破していく姿を、沿道で応援していきたい。
<文/中木風子・写真/原敏昭>