第68回アトリエ訪問   画家 児玉伸子

プロフィール

1984年10月 第27回新協美術展新人賞

1987年 8月 広島県美展 奨励賞‘93、’94の3回

1991年12月 現代美術交流展(北京市)‘04上海

‘93、’02韓国と‘96、’98、‘00ドイツハノーバー市で。

2002年 3月 広島の今、女性作家の鼓動展(東広島市)

2005年 5月 現代美術世界展(中国、スペイン、フランス、アメリカ)へ出品

2010年12月 新エコールドパリ浮世・絵美術家協会会員

2011年 5月 万葉集・源氏花・平家物語から作品展(八千代の丘)

現在 日本国際美術家協会会員

梅雨の合間薄曇りの日、児玉伸子先生のアトリエにお邪魔した。元気なお声と素敵な笑顔が印象的だった。

アトリエでは源氏物語をテーマにした華美で幻想的な制作中の作品が出迎えてくれた。

源氏物語の宇治十帖〔浮舟〕を先生なりの解釈で画面に表現されているとのこと。この夏“水”をテーマにした作品展を開かれる。宇治川に織りなす人間模様もまた水の流れのなせる技のように見える。

「こちらへどうぞ」と台所へ、「今はここが染色スペース」。二間続きの広い和室は長い着物や帯などが作品へと生まれ変わるスペース。

帯になる長い白地の布が、淡いアクアブルーから鮮やかなマリンブルーへ 青一色で描かれた

・・・ほととぎす、棟の花、あやめ、五月雨、花橘・・・。新古今和歌集の夏の歌をもとに物語のように表現されている。逆さ文字の歌を添えて。

「何故逆さ文字なのですか?」と伺うと外への表現ではなく内への表現とのこと。? を残しつつ逆さ文字・鏡文字を調べてみた、レオナルド ダビンチは自分自身のために鏡文字を書いたとあった。

先生は、36年間美術教師を務められ、その間は新協美術で制作活動をされてきた。退職後は、平面に限らずいろいろな表現の制作へと目を向けられている。海外への出品も積極的で、制作中の作品もあった。外国向けの、金色の壁紙にねむの木の細い葉と柔らかな花を描くと、金色がまるで金箔を貼ったように見える。壁紙の効果が生きている。

先生は額もご自分で工夫されている。アクリル板で立体的に作られた額は、とても素人作には思えない。

昔、田植え用として使われていた六角形の2m余りもある枠組みに透明な板を張り付け、ガラス絵のように表は黒の輪郭、裏は着色で万葉植物を描かれている。中に電球を灯すと、ときらきらと小川が流れているように見える。ここにも水をテーマにした作品が出来上がっている。

以前はお住まいとして使われていた母屋は、ほとんどのスペースがアトリエに。窓から見える緑の景色、庭の植木や花たち。のんびりとしてくつろげる空間で四季折々の景色を眺めながら、

意欲的に制作される。「冬は寒いです、だから冬は読書、古典を読みます。春になると花と一緒に活動も始めます」と。

コーヒーを頂きながら、小谷焼のお話や自家製の麦でパンを焼いたり、梅や無花果でジャムを作ったり、柿の葉やスギナのお茶の作り方、そして地域で進めている活動の事と尽きることなく会話が進む。もっとお聞きしたい心残りを感じつつアトリエを後にすることになった。

<文/山口操・写真/原敏昭>

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取材中の風景