日本、中国の多くの先人達の書を学び、新感覚を取り入れ、作る喜び、書の楽しさを追究。
プロフィール
貝原 司研に師事
(財)毎日書道展審査会員
全日本書道連盟評議員
奎星会同人会員 ・ 理事
玄曠書道会理事長
十来書道会代表
■ 書に奉ず
迎え入れてくださった書院には、上田 桑鳩の掛け軸がかかっていた。旅先でこれはと思って持ち帰り、落款が確かなものであると、発見した無上の喜びがあるそうだ。落款の材、墨、硯のコレクションも多く、硯の展示会などもされたことがある。一部屋の床が沈み込むほどの蔵書とともに、先生の全生活が書に奉じられている感があった。
■ 気合を籠める
今年8月9月10月と展覧会が続いた先生は、前衛、楷書、草書、甲骨文字、などさまざまな領域の創作をされている。そして大きな展示会では全体のイメージ、見え方のバランスが良いかどうか構成を主に吟味されるそうだ。
書のエスキース、アイディアがつまった帳面をみせていただいた。ひとたび筆をとられる時は、ぎっしり何冊にも書きとめられたこのノートからいくつもの発想が展開される。いったん決まると頭の中で構想を練られ、一気に筆が運ばれる。見ているほうからすると、まるで空中から吸いこまれるように取り出された気が、筆先から湧き出しているようだ。一瞬の気合が凝縮するからこそ、作品には見る者に訴える力が供わるのだそうだ。
■ 道程
小学生の時から書道において栴檀を地でいかれ奎星会の全国展などで頭角を現した。17歳で、当時大竹高校にいらした貝原司研先生に師事。毎日書道展の40回でグランプリ。と、まっすぐ書家への道を歩まれている。先生によれば運が大きいといわれるが一流の謙遜であると思う。
この毎日書道展は今年で61回と歴史が長い。今回、先生は中国展の実行委員長を精力的にこなされた。なにしろ大きな展覧会なので去年の11月に役につかれてから各地10会場の実行委員長、理事の方々と1年かけて準備をされたのだとか。こうした活動が多くの人をとらえ書の道を広く豊かにしていくのだろう。
今回の訪問で、創作にかんすることのみならず、殷の卜占から発した甲骨文についての話から、遣唐使の歴史、空海の旅、など伺っているうちに当初の予定だった訪問時間をとっくに過ぎていることを忘れてしまっていた。玄関から辞し、道路の様子をみるとすっかり濡れている。お話が面白く、途中で激しく雨が降ったことすらも気づかなかったのだ。
<文/泉尾・写真/原>