アトリエ訪問第18回 木下 和氏

単調な日々のなか、時と刻とに身を委ね、固着しきった空虚さで、今日もまた、日々の証しをキャンバスに止めんと

プロフィール

1973年 第7回現代日本美術選抜展に招待出品 (文化)
1985年 安井賞展(1987・1990・1991)
1989年 ヒロシマアートグランド ’89受賞
1999年 「遺されしものへ・エジプトファラオの伝言-木下和展」広島三越
2003年 「遺されしものへ・エジプトファラオの伝言-木下和展-Ⅱ」広島三越

  江波の気象館を南に入りロードスターが留めてある和洋折衷のお宅が木下先生のアトリエであった。奥様の明るい色調の作品が数枚置いてある廊下を通り広いアトリエで先生を待ち受ける。奥様も子供たちに絵を教えていらっしゃるそうだ。

  木下和先生は今日も講師先の基町高校で午前中生徒の美術指導をされお帰りになったところであった。私も同校の卒業生なので本題に入る前に優秀な後輩の話に時間をかけてしまった。2階まで届く高い斜の天井、沢山の未完成のキャンバスや先生の自画像、机上の白いノートパソコンやプリンターなどが目に付く。200号の作品が立てかけられていたが、大きさを感じさせない部屋の広さと高さであった。

  先生の絵にみるピラミッドやスフィンクス、砂漠の迫力は今まで見たどのテレビ映像や写真もかなわないと思う。早ければ来春に国際交流基金の呼びかけでカイロに於いて展覧会を開く企画が進行中とのことであるが、何より関心があったのはそのエジプトとの出会い。切っ掛けは1995年に奥さんの呼びかけで参加されたツアーで、以来昨年までに9回程ご夫婦で訪問されたとのこと。何より邂逅という言葉を大切にされている先生の一途さがそこに収れんされている。

  そのときから作風も大きく変わられたのだろうか?その疑問に対しては、几帳面に整理された写真集に収納された大学時代から現在に至る迄の作品を拝見し、ご説明をいただいた限りなんら変化がないことが認識できた。

  写真集の中でひときわ目に付いたのが画業40周年を記念した個展の時、早大の吉村教授とのコラボレーショントークショー。4年前と言うからわずかな違いで参加できなかったことが惜しまれた。

  さらに作品が出来上がるまでのプロセスについてもご丁寧なレクチャーを受け、先生の筆遣いは大きな作品で真価が発揮されることを認識する。今後先生の作品を鑑賞するとき一つ一つの色の重なりを必ず思い浮かべることになるだろう。

<文・馬場宏二/写真・原敏昭>

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取材中の風景