第72回アトリエ訪問 画家 岡本礼子

プロフィール

2005年

スペイン美術賞展優秀賞

05~09年

フランスエコール ポール・アンビーユ氏に師事

2006年

広島二科賞

2008年

広島二科奨励賞武蔵野美術大学造形学部卒業

2010年

宮島町屋通り 灯篭わらべ唄 4月20日まで

2011年

第96回二科展 特選受賞

現在

二科会同人 JIAS美術家協会会員

子育てサポートアトリエREIレイLLC 代表

猛暑の夏から秋を感じることなく寒い11月を迎え一段と冷え込んだ朝、岡本先生のアトリエにお邪魔した。入口のガラス戸に生徒さん達が描いたお花の絵が楽しそうに陽射しを浴びていた。

いつでもだれが来ても愛想よくお迎えしてくれる柴犬のトッポちゃんに大歓迎されてのスタート。

アトリエはお母様の編み物教室だったところを改装。天井を高くとり、大作を描くのに十分な距離をとれる広く長い空間、壁は漆喰、床は自然のままの杉の板、自然の温もりを感じるアトリエはとても心地よく先生のお人柄もあり、話はどんどん熱を帯びていく。

ここでは、子供と大人の教室をされている、特に大人の生徒さんは、自由気ままに通われて絵を描いている、また友人の方も集まっては談笑されて、深夜に及ぶ事もたびたびだとか、居心地の良いスペースだ。

先生は、現在二科会で活躍されている、20代の頃から連続入選、第96回二科展では特選を受賞された。天職だと思っていた保育士の仕事を30年務め、一大決心をして退職。「絵を仕事にしよう」とフランスエコールでポール・アンビーユ氏に師事、2005年から5年間の絵画修業を経て色彩や表現に一段と磨きをかけての特選受賞であった。アンビーユ氏から学ぶうち、「自分の中の自分を信じろ」という言葉をいただいた、(正しいかはわからないけれども自分自身を大事にしろ)と。心にずっしりと勇気づけられる言葉だ。

退職は公務員時代と違って沢山の物を生み出した、自分の時間はもちろんのこと、幼児教育にも一段と熱心に取り組むようになった。2008年に保育園「アトリエREIレイこども舎」を開園、今年13年には園舎を新築し、現在6カ月の乳児から6歳までの幼児が入園している。通常の保育では限りのある造形や遊びの中から自由な発想のできる環境に力を注がれている。先生がモデルとしている教育がここにあるのですと見せていただいた本が「レッジョ・エミリアからのおくりもの」イタリアの小都市レッジョ・エミリア市の乳幼児教育、子供を市民の真ん中にした教育をもとにされている。この教育実践者であるローリス・マラグッツィ氏の「冗談じゃない、百のものはここにある」という詩を読んだ、もう一度子供に戻りたいな、と思ってしまった。

先生は大学などへ講座を持たれている。これからの教育を担っていく若者たちへ現場から学んできたことを含めメッセージを送っている。一緒に仕事をされてきた保育士の方たちと今も教育の在り方について前向きに語りあうそうだ、創造性・想像性を大切に自由なものを生み出していく子供たちの未来を見据えて。熱心に語られる姿は生き生きとして止めどなく話が進んでいく。

「ところで先生少し作品の話を頂けませんか」と熱の入っているところで絵を見せていただく、

先生の絵は対象を見つめ突きつめていったもの、桜の花・木々の緑・火の鳥・波やうずまき等を抽象的なイメージに置き換えて線で表現されている。子どもたちが粘土遊びをするときの一生懸命ギュッと握る気持ちと同じように、線に力と気持ちを込めて表現する。線を大事にするようになって自分の生き方も大事にするようになったと、現在の対象はバラ、平和と愛の象徴、特選の作品もバラである。青い大きなバラの絵、青なのに少しも冷たさを感じないおおらかで大胆にそして包み込まれるような温かさも感じる。先生そのままが作品の中に在るようだ。

「時間と仕事に追われていた頃と比べて変わった事は沢山あるけれど、やりたい事と自由な時間がたっぷりある、やりたい事が自分を活かして行く「絵で生きていこう」と決めた時から、すべては後から付いてくる」と思い切りのいい決断力と行動力、そして着実にやりたい事を進めていく先生は、とても若々しく溌溂としている。昨日出雲に行かれたとかで出雲大社のパワーをいっぱい吸収されたようだ、しかし先生自身が一つのパワースポットのような気がしてならない。元気と力を与えてもらった、とても有意義なアトリエ訪問であった。

<文/山口操・写真/原敏昭>

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取材中の風景