アトリエ訪問第15回 福原 匠一氏

日本画は作品を作って行く過程の時間がかかり過ぎて大変であるが、その面倒な過程が楽しいと思う。兎に角面白がって絵を描きたい。

プロフィール
・1945年生まれ
・広島文化賞受賞
・ヒロシマアートグラント’91受賞
・日春賞受賞
・日春展外務大臣賞受賞
・臥龍桜日本画大賞展受賞
・日展会友・広島日展会会員
・日本美術家連盟会員
・広島日本画協会副会長

  福原先生のアトリエは川尻の海と山に挟まれた町の中にあった。この日は先生の作品を超高画質な写真に納めさせていただくための撮影班が加わり4人のメンバーで押しかけ、しかも午後から呉の市美展の準備に行かれるお忙しい狭間にもかかわらず、温かく出迎えていただく。筆者とはたった1歳の差なのにどうして10歳以上若く見え、しかもダンディーなのだろうと余計な思いを抱きながら3階のアトリエに導かれる。裏を見るとJR呉線が走っている。3階のテラスから見える瀬戸内海は晩秋とは思えない輝きを放っていた。日本画との出会いについては、幼少時から図工が大好きだったが、20歳の時黒瀬の碁阿弥赫工氏の個展で日本画に惹かれ、以来15年間指導を受けた後、東山魁夷の義弟に当たる(2006年 芸術院会員)川崎春彦氏に25年間師事されてきたことを淡々と話された。

  アトリエでお話を伺った後、「此処には大きな作品は置いていない」ということで、川尻の港に面したビルの1階の、いかにも海のソバにあるという喫茶店へ移動。そこには先生の作品が展示されていて奥様が甲斐甲斐しく接客されているところであった。まだ先生の作品が陽の目を見ない頃の20年間、こうして店を切り盛りして画家として名を成すまで支え続け、3人のお子さんを育てられた経緯に、店の歴史と奥様の思いを感じさせられる。このビルが次の大作を生むアトリエに変身するのも間近いそうだ。

  ビルの横の倉庫から次々と大作が運び出され、プロの撮影班の出番になる。美術館とは違って路地で見る群緑が印象的な作品の迫力は別物だった。『水郷の朝』『帰り道』『早春』『小さな桟橋』などの作品は霧、雨、水辺、すべて『水』があり、観る者を先生が求め続けられている叙情・癒し・和みの世界に導いてくれるものであった。

<文・馬場宏二/写真・原敏昭>

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取材中の風景